皆さん おはようございます。
長く仕事をやっていれば多かれ少なかれ失敗はつきものです。
でも私に取っては、非常に悔いの残る失敗、そんな事も今までに何度かありました。
その一つが今日公開するLP400 カウンタック事件です。
事件と言っても犯罪などに巻き込まれたわけではありません。
あれは2009年のことですから、今から4年前の事です。
あるお客様に乞われて、カウンタックLP400をアメリカから輸入することになりました。
勿論、この車は対米の輸出仕様はありません。
よく誤解されますが、カウンタックシリーズ全体、
すなわち、LP400,400S, 5000S、クワトロバルブ、アニバーサリー
この5台の車種の中、アメリカ仕様としてメーカーが作ったと言うより
モディファイしたのは、クワトロバルブのみで、
その方法は、排ガス規制をより簡単に通せるように
オリジナルのウエーバーダウンドラフトキャブを、インジェクションに替えたものでした。
確かにそれ以前の5000Sの頃から、衝突安全規制で前後に非情に醜い団子の様な
バンパーを付けたモデルも存在します。
つまりランボルギーニと言うメーカーも、その頃非常に経営状態が悪く
規制に対して大きな改造をするだけの余裕がなかったわけです。
本格的なUS仕様を作り始めたのは次の ディアブロになってからになります。
さて、本題です。
このLP400は サンフランシスコの私と親しい車屋が持っておりました。
今と違い、値段の交渉もスムーズに行き、LAまでローダーで運び横浜へと向かいました。
勿論、その前に私が現地に飛び、現車の確認をしたのは言うまでもありません。
ここまではいつもの通りの仕事です。
車は画像でも判るように、アメリカでフルのレストアを施されておりました。
ボデイの色がいまいちでしたが、お客がこのままで良いと言うのでOKでした。
ここで日本の車検制度について少し説明です。
海外からの輸入車について、規制はこのようになっています。
1、排ガスの規制は76年の3月30日までの製造の車両については免除する
(これには、メーカーが出した生産証明が必要になります。
あるいは合法的にそれを証明する現地での登録記録など。)
2、安全基準適合は 1975年の12月1日以前の生産車については免除する。
(衝突安全基準がメインになりますが、そのほかシートベルトの
取り付け強度とか、ダッシュボードの安全性とか、シート自体の取り付け強度とか
何項目にも及びます)
主にこれが大きな規制になるわけです。
1975年と言えば?
フェラーリで言えば、365BBが 1975年までの製造 512キャブはそれ以降
勿論、デイノ、ディトナなどは1973年までの生産ですから対象外、
ランボルギーニで言えば、ミウラは問題なし、
ところがこのLP400カウンタック、
これの生産が始ったのは1974年から。わずか150台の製造だったのですが
そのほとんどは1975年以降になってから。
そして運悪く、この個体は1976年の4月の生産だったのです。
事前にアメリカでの登録記録、現地ではピンクスリップと呼びますが
それに MAKE 1976 と記載されていたので
排ガスなどの規制を受けなければならないのは始めから判っておりました。
横浜の保税倉庫から車を出し、簡単な試運転を終えた後
昔から付き合いのある、車検専門の工場に車を運び入れました。
いつもなら彼等もプロですから任せておけば何も問題なく車検を取ってくれます。
今まで、レーシングカーまがいの車や、ワンオフのこんな車、車検取れるのか?
と思うような車までナンバーをつけていましたから、私は安心しておりました。
ところが車を預けて2~3日経った頃、連絡が入り、
安全基準の定義が変更になったから、このままでは車検が取れないと
陸運事務所から言われたと。
私からすれば晴天の霹靂!!
お前らもプロなら なんでそんな大事な事を事前に判らないんだ と言うわけです。
おまけに悪い事に、この車のお客が多少政界に顔が聞くお方だったので
怒って、直に陸運事務所に電話したものだから騒動がおきました。
相手は公務員、つまり役所の人間みたいなもの。
いくら管轄の大臣から何を言われようと、とぼけてしまえば終わりです。
むしろこの件で、えらく態度を硬化させ、徹底的に審査するとまで言われました。
今見ても涙がこぼれる?悲運のLP400, ご覧ください。本邦初公開です。





続く。