皆さんおはようございます。
まず報告です。
当社が全面協力し私自身も撮影に臨み、工場でのトークも収録された
NHK の4K放送
「The Legend Car 」
が今月27日より放映が始まりました。
30分の番組です。


でもNHKが4Kにこだわっているため、地上波での放映は今のところありません。
現在この番組が見れるのは、
NTT ぷらら
スマートYVサービス という有料チャンネルで
ヒカリ配信です。
でも大型電器店やNTTのショールームでもリクエストすれば見れるとのこと
是非機会があればご覧下さい。
さて、今日は不運の名車 マセラーティ カムシンの話です。
この車は私がおりましたシーサイドモーターとかなり縁が深く
現在日本にあるカムシンの殆どはシーサイドがいれた車だと思います。
ということは、その時期、営業の第一線で活躍していた?
この私が関わっていないはずがありません。
事実、輸入された約20台のうち半数以上は私が販売しました。
全部新車です。
価格は当時 1800万ほど
今の貨幣価値で3倍として 5400万でしょうか。
かなり高額な高級車です。
まず1号車が入ってきたのは 1974年の9月ころでした。
ベルトーネに在籍していたガンディーニらしい(ジウジアーロではありません、失礼しました)
かなりウエッジスタイルの楔のようなデザインはかなりモダーンな印象でした。
エンジンは前身のギブリ譲りのV型8気筒、4900cc
なのでパワー的にはそれほど驚く程ではありません。
ただ、驚かされたのが特異なハイドローリックシステムを用いた
ステアリングであったり、ブレーキであったり、
それまでの通常のスポーツカーのイメージでは
考えられないようなシステムが付いていたことでした。
一番の特徴はステアリングの センタリングシステム。
当時の提携先のシトローエンのトップモデル 「SM」
と同様の油圧による 強制的にステアリングをセンターに戻すシステムです。
ロックツーロックが1回転半とかなりクイックなステアリングを
道路上で少し切って、手を離すと魔法のようにセンターに戻ります。
静止の状態でも同じです。
当たり前ですが、この車はフロントエンジン、
そのかなり重量が載っかったフロントホイールを
何事もないように据え切りでもセンターに戻すのですから
相当の圧力が掛かっているわけです。
後にこのシステムの採用がこの車を悲運のスーパーカーと言われる
所以になろうとは、その時のマセラーティの幹部達も予想はしていなかった
ことでしょう。

私的にはこの斜め前と、斜め後ろからのデザインが好き。

リヤーウインドウは上げ下げが出来て荷物も出し入れできる。
りヤーのパネルはアクリル製、でもこのおかげでバックが見やすい。

普通はヘッドライトはモーターを使うのにここまで油圧を使ってしまった。



これが後期型のステアリングとオートマ仕様。
まだ、マニュアルのほうがましだった。
ドライブポジションはギブリと同様、シートが低く、サイドシルが
肩まで来て、横が見づらい。そういえばシートの昇降にもハイドロを使っていた。

ちょうどこの頃、シーサイドモーターとして、正式に各輸入モデルでの型式認定というのを
取ろうとしておりました。
それまでは登録しても車検証に型式不明と記載されていたのです。
オフィシャルのディーラーが 新車を販売して型式不明では格好が悪い
そんな理由です。
その白羽の矢が立ったのが、このカムシンでした。
そのためにはおおよそ2万キロにも及ぶ走行テスト、
その間、何度も陸運局に車を持ち込み検査を受けるなど
相当面倒な手続きが必要でした。
当時、工場から一人引き抜いてそれの担当にし
1台の新車をそれに用い、認定を取ろうとしました。
確か、私の記憶では取れたかと思いますが
カムシン自体が人気が出ず、殆ど無意味な挑戦でした。
新車が順番にデリバリーされ、お客にも納めることが始まると
この車はすぐに欠点が露呈し始めました。
そのほとんどが高圧の油圧システムの故障。
よく出たのが専用のLHM オイルの漏れ、
濃いグリーンのこのオイルは下に漏れるとすぐに判りました。
このカムシンではステアリング、ブレーキ、ヘッドライトの昇降など
重要な箇所を担っていました。
最後の方では、ステアリングのシャフトがネジ切れるという
信じられないようなことも起きました。
また、後期ではオートマも導入されましたが
当時のフェラーリ同様、3速のクライスラーから借りてきた
そのオートマは変速.ショックもひどく、お世辞にも高級車とは言えないような
代物でした。
同年代のフェラーリ ディトナが現在 7000万以上もするのに対して
この車はたまに市場に出ても600~800万ほどです。
基本的には良いデザイン、エンジンも良し、内装も良かったのに
変なシステムを使ったばかりに、今ではまともに動いているのが少ないほどです。
不運な車と言えるでしょう。

その油圧システムを変えられないかって?
う~ん 無理でしょう。
かなりなお金がかかります。個人的にはやっても良いかと思いますが。
物好きな人がいたら相談ください。
カムシンの項目終わり。