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ディトナの話の続き

みなさんおはようございます。

10月ももう半ばです。
今年もあと2か月足らずで年の瀬を迎えます。
毎年思うことですが、1年を無事に終えることがとても大切だと。
昔から言いますが、無事これ名馬と。
その意味は逆説的に無事に1年過ごすことが簡単なようで難しいこと、
そのような意味だと思います。

さて、前回の続きですが
私が初めてディトナの隣に乗ってその凄いパフォーマンスを経験した
ところまででした。
そのオーナーの名前は「松崎さん」と言いましたが
その後彼とはとても仲よくなり
可愛がって頂きました。
数年後彼がこのディトナを手放すことになった時にも
私に「お前に任せるから」 と言ってもらいました。
その初めてのディトナの初体験から少したってから
シーサイドでも数台のディトナを輸入し、
私も自分の運転で走らせる機会が増えました。

よく見るのと自分でやるのとは全然違うといいますが
この車も正にそうでした。
まず初めに驚いたのが、ステアリングの重さ
静止状態では壊れているかと思うほど重く
いわゆるすえぎりではかなりの気合を入れないと40センチの
大径のステアリングはびくともしません。
動きはじめるとそうでもないのですが、最近のパワーステアリングに
慣れている人では相当の違和感があると思います。

次に驚いたのが
ブレーキの効きが悪いこと。
普通の考えではパワーがある車なら相当にブレーキも強化するすると
思うのですが、
なぜか他のディトナも含めて殆どがブレーキペダルを踏んでも
まるで板を踏む
そんな感じで止まってくれません。
最近のパワーアシストが強力に効いた車とは正反対です。
ただ、ごく最近ですが、当社の技術陣がブレーキマスターを改良して
「普通に効く」ディトナ用のブレーキを開発しました。
ご安心ください。

そんな欠点を持つ車ではありましたが、
それらを凌駕するのは、何といってもエンジンの素晴らしさでした。
V型12気筒の、先祖をコロンボデザインをベースにした
DOHCエンジンは自然吸気ではこれ以上は望めないというくらいの
フィールとパワーをドライバーに与えます。
先ほど述べた「松崎ディトナ」は
長年の彼の的確なメンテナンスとその豪快な乗り方
各ギヤーで殆どイエローゾーンの7000回転まで回す乗り方により
私が初めて「松崎ディトナ」を動かしたとき
世の中にこんなにスムースな12気筒があるのかと
感激したほどです。
よくジャガーの12気筒がスムースな回り方をすると称えられますが
フェラーリの場合、スムースでありながら
ジャガーよりもはるかにパワフルでしかもデッドエンドまで
軽く回ります。

なので私はこのディトナという車
このエンジンを買うことに意義があるといっても過言ではないと思います。
もちろん、ピニンファりーナ デザインのビュレットスタイル(砲弾型)と呼ばれる
スタイルも美しいのですが、何よりもエンジンです。

あるとき松崎さんが駆るディトナの後ろについて
第三京浜を横浜から東京に向かったことがありました。
その終点の環状8号に出る手前に大きく右カーブがあります。
私は会社のシビックで懸命についていったのですが
普通は減速するべきそのカーブを彼は信じられないスピードで
リヤーホイールをドリフトさせながらすっ飛んで行きました。
もちろん私の感想は「普通の人では無いな」でしたが。
つけくわえれば この車にはリヤーにトランスアクスルというデフェレンシャル
とミッションを一体化したものが付いています。
そこに普通は競技用にしか付かない
ノンスリップデフが採用されているのです。標準で。

このノンスリと言うものは、サーキットのタイトなコーナー
例えばヘアーピンカーブなどで後輪が傾いて片方のタイヤが
浮いても確実にホイールにパワーを伝えるために付いているものです。
それが標準で装着されていることを見ても
この車がただのスポーツカーでは無いことが分かります。
事実当時この車をベースにしたレース仕様車が
ルマンを始め沢山のレースにエントリーし
その耐久性、性能の良さを十分に発揮しました。

まとめです。
ディトナという車は1960年代のフェラーリを語るときに
絶対に欠かせない、レジェンドであると。
生産は1968年から~1973年まで  約1200台
フェラーリが長年繋いできたフロントエンジン12気筒の最後を
飾る、エポックカーであると。
その次代は皆さん御存知の BB ベルリネッタボクサーです。

私は今回この名誉あるディトナをさらにもう一台
新車同様に蘇らせる仕事を与えられて非常に幸いでした。
是非皆さんもこの稀代の名車の姿を見に来てください。
そのエンジン音を聴いたらシビレルこと間違いなしです。
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現在作業中の当社のディトナは完成予定が今年の12月中旬です。







プロフィール

CASTEL AUTO

Author:CASTEL AUTO
「子供の頃から純粋に車が大好きだった」

そんな無邪気な少年は自然の成り行きで
1974年、伝説のシーサイドモーターに入社。
49年経った現在も車に対する愛情と情熱は冷めやらぬまま
今日もひたむきに走り続けている。

キャステルオート
鞍 和彦

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